病気の解説 要約

自然気胸

気胸は肺に穴があくことで、肺の中の空気が胸腔内に漏れ出し、肺がつぶれる疾患です。突然の胸背部痛、呼吸困難、咳などを主症状とします。原発性自然気胸は長身、痩せ型の若い男性におこりやすいとされています。治療は、気胸の程度により安静、胸腔ドレナージ、手術と様々です。

原発性自然気胸の方の肺嚢胞の病理像です。一般に、肺の表面から突出するような線維性肥厚を伴う嚢胞を認め、嚢胞の基底部には、リンパ球などの炎症細胞の浸潤を伴うことが多いです。Aは手術の際に切除された肺嚢胞のルーペ像です。一般に嚢胞の大きさは様々ですが、この例では直径1cm程度の大きさです。B、Cは嚢胞の顕微鏡写真です。Bは嚢胞と正常肺組織との境目付近を示していますが、リンパ球を含む炎症細胞浸潤が認められます。Cは嚢胞の壁が線維性に肥厚している像を示しています。

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COPD(慢性閉塞性肺疾患)

「タバコ病」「肺の生活習慣病」と呼ばれるCOPDは、たばこ煙などの有毒物質の吸入により徐々に肺が破壊される疾患です。主な症状は、咳、痰、息切れです。治療の第一は禁煙であり、病状に応じて吸入薬、内服薬、呼吸リハビリ、酸素吸入などを必要とすることがあります。

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間質性肺炎

間質性肺炎は、肺の間質組織が線維化することで肺が硬く、膨らみにくくなる疾患です。そのため肺活量が低下し、呼吸困難や乾性咳嗽などの症状が出現します。いくつかの分類があり、それにより治療方針、予後が異なります。

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Birt-Hogg-Dubé症候群(BHD)

BHD症候群は、顔や頸部の小丘疹(線維毛嚢腫)、腎腫瘍、肺嚢胞と気胸を特徴とする稀な遺伝性疾患です。確定診断には、遺伝子検査が必要です。気胸は20歳頃からおこり、繰り返す場合が多く、気胸の治療や予防が重要となります。BHD症候群の診断後は、気胸や腫瘍を合併しやすい体質であることを理解し、定期的な健康管理に務めることが大切です。

Aはルーペ像である。嚢胞は大小不同があり嚢胞壁の肥厚を認めない。背景の肺組織には炎症や線維化は見られないきれいな肺である。Bは顕微鏡写真である。小葉間間質や胸膜などの広義の間質に接する嚢胞で静脈の突出(矢印)を認める。内部に薄い隔壁(矢頭)を伴うことがある。嚢胞壁は菲薄で炎症のない肺胞壁よりなっている。

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月経随伴性気胸

月経随伴性気胸は女性に特有な気胸です。子宮内膜組織が胸腔(肺、横隔膜、胸壁)に生着、増殖する異所性子宮内膜症/胸郭子宮内膜症と呼ばれる疾患です。そのため月経時に気胸が発症し、時に胸痛や喀血を引き起こします。確定診断には胸腔鏡検査が必要で、手術やホルモン療法などの治療があります。

女性に特有な気胸で、子宮内膜が肺や横隔膜に播種することにより、気胸を起こす。通常月経とともに繰り返すことから、この名称がある。しかし、必ずしも月経時におこるとは限らないので、繰り返す女性の気胸の場合疑う必要がある。Aは肺の嚢胞であるが、壁が肥厚しやや細胞が密に集まっているのがわかる(矢印)。Bはその部の拡大で、子宮内膜間質細胞の増殖と出血によるヘモジデリンの沈着を認める。Cは横隔膜にあった子宮内膜症で横隔膜が菲薄化している。

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リンパ脈管筋腫症(LAM)

LAMは、平滑筋細胞に類似した細胞(LAM細胞)が、肺、身体の中心リンパ系のリンパ節などで増殖する稀な疾患です。肺嚢胞、気胸、胸水、腹水、腹腔・骨盤内腫瘍など多彩な病変を有し、様々な症状を呈します。LAMは単独で発生する場合と結節性硬化症という遺伝病に伴って発生する場合があり、現時点では有効な治療法のない難病です。

LAMの病理像です。A は嚢胞の内腔の肉眼像ですが、嚢胞内部には凹凸があり、血管や細気管支が索状
(矢印)に認められます。B は顕微鏡写真ですが、嚢胞(a, b, c)は類円形で嚢胞間に虚脱した肺組織がみられます。嚢胞は細気管支と連続しています。C はLAMに合併する乳び胸水、腹水、心嚢液中に認められるLAM 細胞集塊(LAM cell cluster; LCC)を示しています。約50 - 150 ミクロン程度の大きさで、LCCの表面はリンパ管内皮細胞により被われています。D はLAMがどのようなメカニズムで進展するのかを示す模式図です。上段のようにL、AM 結節内部ではリンパ管がスリット状に増殖しリンパ管相互のネットワークが作られます。その結果、LAM 結節がリンパ管腔により細分化され、最終的にリンパ管内皮細胞に被われたLAM細胞集塊(LCC)が生成され、リンパ管の中に遊離されます。下段は、遊離したLCC がリンパ節にトラップされ着床し増殖することを示す模式図です。LAM 細胞はリンパ管内皮増殖因子(主にVascular endothelial growth factor-D)を産生するためLAM 結節内でリンパ管内皮細胞が増殖し、上段の左側のようになり再びLCC の産生が繰り返され、リンパ管内に遊離していきます。これを繰り返すことにより、LAM 細胞は体軸リンパ節に沿って進展していくと考えられます。

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リンパ脈管筋腫症に対するシロリムスの有効性と安全性(MILES試験)

MILES試験は、LAMを対象として実施された初めての大規模な二重盲検臨床試験*で、アメリカ、カナダ、日本のLAM患者さんが参加しました。シロリムスsirolimus(商品名ラパミュンRapamune)という薬剤は、欧米では腎移植の際の臓器拒絶反応を抑制するために使用される免疫抑制剤ですが、LAMにも効果があるのではないかと期待されてきました。試験の結果、シロリムスは期待されていた程の著明な肺機能の改善は得られなかったものの、肺機能を指標とした病勢を安定化させることが示されました。また、1年間の内服期間中に軽度の有害事象(副作用)がありましたが、安全性も示されました。しかし、シロリムス投与終了後は肺機能が偽薬群と同じように低下し、投与を中止することでその効果が早期に消失し肺機能が悪化する可能性が指摘されました。

*二重盲検臨床試験

患者、担当医師、ともに実際に内服している薬剤が実薬(MILES試験の場合、シロリムスを指します)なのか偽薬なのか不明な状況で臨床試験を行う事を指します。最も科学的に薬剤の治療効果を判定することができる仕組みです。

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腎血管筋脂肪腫

腎臓に発生する良性腫瘍の一つです。血管筋脂肪腫は英語でangiomyolipomaと言い、よくAMLと略されます。主に腎臓にできることが多く、腎血管筋脂肪腫と言われますが、時には肝臓、子宮、リンパ節、肺などにも発生します。AMLは、その名が示すように血管、筋肉、脂肪を主たる構成成分とする腫瘍ですが、各々の組織の割合は個々の腫瘍により異なっています。LAMの日本の疫学調査の結果では、LAM患者さんの20-30%位はAMLを合併しています。

【病理像】

通常、腎外側に突出するように増殖する境界明瞭な腫瘤として認められます(白矢頭で囲まれた領域.この腎血管筋脂肪腫は約2 cm大)。割面では通常脂肪細胞が豊富で黄色調の色調を呈しますが、血管や平滑筋様細胞の増殖の割合でAのように褐色調の色調が混在する場合もあります.顕微鏡でみると、Bに示すような大小の脂肪細胞とともにさまざまな大きさの血管の増殖(白矢印)を認めます.また、Cに示すように正常平滑筋と同様の細胞の増殖があり、これらがさまざまな割合で混合し増殖しているために腎血管(平滑)筋脂肪腫と呼ばれています.しかし、これらのように正常な脂肪、血管、平滑筋細胞のように見える細胞のみではなく、Dに示すように、時により由来が不明な細胞が充実性に増殖するいわゆる「類上皮型細胞」も認められることがあります.これらの細胞は類上皮型細胞も含めて正常な脂肪細胞や血管、平滑筋細胞にはない、色素細胞に関連した抗原であるHMB45が陽性になるという特徴があります.

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結節性硬化症(TSC)

結節性硬化症はプリングル病とも呼ばれ、常染色体優性遺伝の病気です。皮膚、神経系、腎臓、肺、心臓、骨、眼などのいろいろなところに病気が起こります。人口7,000人に一人の割合で発症するとされますが、病気の程度の軽いヒトは気づかれずにいる可能性があります。家族内でも病気の程度は様々で、子供が結節性硬化症と診断されたのを契機に親の病気が気づかれる場合もあります。結節性硬化症の成人女性には、リンパ脈管筋腫症(LAM)や腎血管筋脂肪腫を合併することが多いです。

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TGF治療 -難治性気胸に対する新規治療法-

気胸には、どのような治療をしても、なかなか空気漏れが止まらない場合があります。手術で空気漏れを止めたくても、気胸の原因となっている肺疾患が重症なため手術ができない場合があります。TGFとは、ThoracoGraphic Fibrin Glue Sealing Methodの略語で、胸腔造影下フィブリンのり閉鎖法、が日本語名称になります。手術のような体に負担のかかる治療ができないような場合には、とても有効な治療法のひとつです。

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