Q&A

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Q1.気胸の原因はなんですか?また、なぜ再発するのですか?

A1.気胸の原因や再発するメカニズムは、明確には判っていません。
気胸は、一般的にはブラ、ブレブと呼ばれる肺嚢胞(のうほう)が破れることで起こります。しかし、なぜ破れるのか、は判っていません。ただ、気胸は、経験的には以下のような状況で起こっていることが多いようです。

  1. 身体的、心理的ストレスを感じている時。たとえば、深夜の仕事や徹夜の勉強などの寝不足状態が続く時。
  2. 残業などで慢性的な疲労状態にある時。
  3. 不安や心配なことがあり、精神的にストレス状態にある時。例えば、
    • 職場での人間関係で悩んでいた
    • 仕事上の行き詰まり状態であった
    • 転勤などで環境が変わった
    • 海外旅行に行く(時差の問題と異国というストレス)
    • 学生の場合はテスト前後に起こることが非常に多い
    • 夫婦喧嘩や彼氏との喧嘩
    • 結婚式が近づいた時に起こったり、あるいは離婚調停中に何回も起こしたり。
  4. 気圧の変動がある時が多い。すなわち、雨や台風の時期などです。
  5. 喫煙習慣のある人。

精神的なストレスは気胸の誘因となるようだと考えますが、何をストレスと感じるかは人によって違いますので、ひとくくりでまとめることは出来ません。原因を探るのはかなり難しいと思います。したがって、個々の事例ごとに探ってゆくことになります。再発をしないよう自分で出来ることと言えば、基本的な生活において節制をすることに加えて、上記のような個々のストレスになるものを避けてゆくことが重要です。

Q2. 気胸を起こした経験があります。また起こるのが怖くて、仕事を辞め、遠出もしていません。気胸を起こさない為に注意しなければならないことがありますか?

A2.基本的に仕事を辞める必要はありません。
程度を越えた疲労、過労、精神的ストレスを受ける状況をなるべく改善することです。喫煙は肺に炎症を起こし、徐々に肺を破壊していくので当然禁止です(Q1も参照)。
適度な運動も可能です。運動中に気胸を起こすことは必ずしも多くありません。しかし、ダイビングはやめましょう。水中で気胸になると致命的な状態になるからです。浮上できなくなってしまいます(Q21も参照)。
リンパ脈管筋腫症(LAM)やBirt-Hogg-Dube (BHD)症候群のように気胸を起こしやすい病気をもつ方が海外旅行に行く場合は、注意が必要です。医療制度も違う上医療費も高いので、海外に行く際には旅行保険に加入しておいた方がいいでしょう。また、その際には気胸治療に保検が適応されることを確認しましょう(Q22も参照)。

Q3.気胸の肺にはどんなことが起こっているのですか。

A3.肺は胸郭内で膨張した状態で存在します。その内部の構造はスポンジのように細かい穴が開いていて、ガス交換(酸素と二酸化炭素の交換)を行なっています。呼吸をすることでガス交換が順調に行なわれます。その肺の表面の胸膜に穴が開くと肺が萎んでしまいます。それで呼吸がしにくくなり「息が吸えない、吐けない」状態になります。気胸(肺の虚脱)の程度により症状にも差が出てきます。

Q4.肺の嚢胞(のうほう)、ブラ、ブレブ、とはなんですか? なぜ、生じるのですか?

A4.嚢胞、ブラ、ブレブはいずれも、肺内の異常な空気を含んだ空間に対して用いられる言葉です。要するに、肺の中に生じた「穴」です。その定義、あるいは言葉の意味は、レントゲン画像での所見を表す場合(=放射線学的な定義)と、顕微鏡で見た組織所見を表す場合(=病理組織学的な定義)とで、異なります。
嚢胞は、主に放射線学的な言葉で、ブレブやブラは病理組織学的な言葉です。ただし、ブラは嚢胞と同様に、レントゲン画像の所見を表現する際にも使用されます。多くの医師は、ブラと嚢胞に明確な区別をせず、ほぼ同義語として使用されていると思いますが、放射線科の領域では、「嚢胞の壁の厚さは2mm未満、ブラは壁の厚さが1mm未満で大きさが1cm以上のものをさす」と定義されているようです。
病理組織学的な定義では、ブラは肺胞壁の破壊,融合,拡張により生じた空間が、肺の表面を覆う臓側胸膜の内側の肺実質内にあるもの(つまり、臓側胸膜に傷害はありません)を示します。一方、ブレブは、肺胞壁の破壊,融合,拡張によって生じた空間が臓側胸膜の一部を破壊して胸膜の間に入り込んだ胸膜内の気腔を示します。したがって、気胸はブレブの破裂によって起こります。ブラとブレブの区別は、病理組織検査でも、しばしば困難です。胸部CTでは区別できません。手術時によく観察しても、肉眼では区別はつきません。そのため、ブレブとブラをあえて区別せずに、“ブラ”、と言う場合が多いようです。

Q5.気胸は男性に多いと言われていますが、女性はなぜ少ないのですか。

A5.若い人も、高齢の人も男性が多いのは事実です。なぜ男性に多く女性に少ないかは判りません。若い人の場合は体型的に背の高い痩せた人に多いです。若い女性も同様な体型です。高齢者の場合は、男性は喫煙している人が多いために肺気腫という病気になっていて気胸が起こりやすいのです。
女性の気胸は少ないですが、他の病気の一症状として表れることが多いのです。代表的なものは月経随伴性気胸、リンパ脈管筋腫症(LAM)などで注意が必要です。

Q6.気胸と関係する病気はありますか?

A6.気胸はいわゆる病名ではありません。病気の状態を表す言葉です。肺が虚脱して息苦しさや胸痛が出現して日常生活が制限される場合をさします。肺の病気がすべて含まれると言えます。しかしながら気胸を起こしやすいものと、比較的少ないものとがあります。気胸を起こしやすいものは沢山あります。自然気胸(ブラ、ブレブによる)、肺気腫(慢性閉塞性肺疾患)、間質性肺炎、肺線維症、肺ガン、肺結核。女性に特有な月経随伴性気胸、リンパ脈管筋腫症(LAM)。先天性の病気では、Birt-Hogg-DubeDubé(BHD)症候群、マルファン症候群などです。これらの肺の組織を壊してゆく病気の病変が、肺の表面に近いところにある場合には気胸を起こしうるわけです。また交通事故やスポーツによる胸部打撲、肋骨骨折も肺を傷つけて気胸を起こします。その他鍼灸治療時に鍼が体内に深くはいり気胸を起こす場合があります。これは医療事故のひとつとして最近増えてきました。また喘息発作にともなって気胸が起こることもしばしばあります。治療に関してはそれぞれの原因や病態に合わせて考えてゆく必要があります。

Q7.気胸に似ている病気はありますか。

A7.レントゲン写真で肺の組織が見えない状態のものとして巨大肺嚢胞症があります。 ヘビースモーカーに起こりやすい病気です。時々気胸と巨大肺嚢胞が誤診されて、紹介されてくる場合があります。専門医でも判断が難しい例もあります。

Q8.気胸は遺伝するものもありますか?

A8.最近は遺伝子の解析が進み遺伝子病として捉えられているものもあります。Birt-Hogg-Dube (BHD)症候群やマルファン症候群は、その代表的な例です。リンパ脈管筋腫症(LAM)も結節性硬化症という遺伝性疾患の肺症状として発症している場合があります。遺伝子が明らかでなくても、体型が似ているという意味では家族内で気胸を起こすことは珍しくありません。

Q9.気胸になったらまず、どうすればよいでしょう?

A9.まず、安静を保ちましょう。あせりや不安感は禁物です。胸痛は数分で治まることが多いですし、息苦しさも安静でイスなどに座っていれば我慢できることが多いと思います。近くの病院でレントゲン写真をとり気胸かどうかを診断してもらいます。応急処置として胸腔ドレナージをしてもらうのが第一です。

Q10. 気胸になった時の処置法について教えて下さい。

A10.気胸の治療には2つの目的があります。第一は肺と胸壁との間の空間(胸腔)に貯まった空気を取り除き、肺を膨張させることです。第二は気胸の再発を予防することです。これらの目的は治療法の選択の際に考慮されなければなりません。以下、一般的な判断の目安として記載しますが、実際には患者さん毎に担当医が判断することになります。

  1. 気胸の程度による判断
    a. 軽いものは安静
    b. 外来治療用の小型胸腔ドレーンを挿入する
    c. 入院管理の胸腔ドレーンを挿入する
  2. 初めての気胸か、それとも再発か
    a. 初回は非手術的治療が主体であるが、空気漏れが止まらない場合は胸腔鏡手術を考える
    b. 再発は手術を考える
  3. 癒着療法は最後の手段なので最初からしないようにする。

Q11.気胸で最も危険なこととはどのようなことですか?

A11.気胸で致命的に重症になる危険性があるのは、つぎの3つの場合です。

  1. 同時に起こる両側気胸
    両方の肺が同時に気胸になり、しぼんでしまう状態です。これは窒息になってしまうので、非常に危険です。レントゲンを撮らなければ判りませんので、気胸になったら早めにレントゲンをとりましょう。
  2. 血気胸
    癒着などが剥がれて出血を伴った気胸です。ドレナージをして血液が出てきたら要注意です。緊急手術が必要な場合もあります。
  3. 再膨張性肺水腫
    気胸が長いことおこっていた場合(3日以上)、気胸が高度な場合にドレナージを行なうと急に咳き込んで水分を多く含んだ痰が頻回に出る場合があります。肺が膨張するときに肺の血管の透過性が高まり肺の細胞に浮腫が起こることがあります。酸素投与やステロイド剤を投与して厳重な管理が必要になります。
  4. 緊張性気胸
    気胸が発生した際に、空気漏れの原因となった肺表面の損傷部から、息を吸った時には胸腔に漏れるが息を吐く時には胸腔から出て行かない(チェックバルブ機構と呼ばれます)状況が持続すると気胸側の胸腔はどんどん空気が溜まってふくれていきます。この時、気胸側の胸腔内の圧力は高まり、心臓や健常側の肺が押しつぶされるようになり、呼吸と循環の両方の障害がおこります。とても生命に危険な状態です。外傷や人工呼吸器使用中に生じた気胸時などに起こることがあります。

Q12.気胸は手術をすれば再発はありませんか?

A12.現在は胸腔鏡手術が一般的ですが、再発は3-20%と成績は病院によってばらつきがあります。気胸の原因となる病気、その病気の程度、年齢、性別、糖尿病や感染症の有無、投与されている薬によっても異なります。気胸の治療はどのようなものでも100%再発を起こさない方法はありません。なぜなら胆石症の胆のう摘出術や、急性虫垂炎の虫垂切除術と違って取り除いてしまえば100%その病気にならないという疾患ではないからです。肺をすべて摘出することはできませんし、常に残った肺のどこからか肺のう胞が発生したり、破れたりする可能性があるからです。肺のう胞を切除すれば良いと考えてしまう単純で早計な判断が一番問題となります。安易に癒着療法や肺のう胞手術を受けると、その後の治療に悪影響を及ぼすことがあります。実際にそうした患者さんが紹介されてきて治療が難しくなってしまいます。しかもそうした患者さんが増えていることも事実です。呼吸器の専門医ではない医療機関での治療は基本的にはお奨めしません。

Q13.ブラやブレブを切除すれば気胸の再発はありませんか?

A13.現在の手術に対する考え方では切除だけでは不十分です。付加的治療を行なわなければ再発を減らすことは出来ません。以下に付加的治療について列挙します。

  1. 吸収性メッシュによるカバーリング術
  2. 壁側胸膜擦過術
  3. 臓側胸膜電気凝固術
  4. 臓側胸膜剥離術

現在では(1)が一般的ですが、メッシュの材質やカバーリング(被覆)する肺表面の範囲も医師により様々です。しっかり術前に説明を聞きましょう。

Q14. 胸腔鏡手術をしてもすぐに再発する場合、麻酔や術中の人工呼吸管理に原因は求められませんか?

A14.麻酔は分離換気、陽圧呼吸管理をします。したがって反対側のブラが麻酔中に大きくなり、破けやすくなっていることを実際、経験します。玉川病院気胸研究センターのように気胸治療を多く行っている病院では、麻酔医にこの事情を説明し陽圧をなるべくかけない麻酔をするようにしています。この技術は結構難しいと思います。かなり経験を積んだ麻酔医にお願いすることをこころがけましょう。リンパ脈管筋腫症(LAM)やBirt-Hogg-Dube (BHD)症候群の患者さんのように嚢胞が多数あって気胸を起こしやすい患者さんの麻酔では、これは意外な盲点で注意が必要です。具体的には術中の様々なモニターに注意しながら、変化が起こったときには反対側の気胸が起こったかも知れないと考えることが重要です。そして常時ドレナージが出来るように準備をしておくことが重要です。

Q15. ドレナージ、胸腔鏡手術にかかわらず、気胸の手術後、すぐに歩かされる病院と、絶対安静にさせる病院がありますが、両者の違いは何故ですか?またその違いによって、再発率は変わりますか?

A15.教科書では術後は安静が重要と書いてあります。しかし、最近の研究では普通に歩行したり、活動したりした方が実は肺の膨張が良いとの研究があり、玉川病院気胸研究センターではなるべく動かすようにしています。安静を強調する方法は経験の少ない医師のやり方、もしくは患者さんの状態に特に注意が必要な場合と言えるでしょう。再発率に差はないと思います。

Q16.癒着療法を薦められていますが、これはどのような方法ですか?

A16.肺の表面と、肺が収まっている胸郭を癒着させることで、漏れた空気がその間の空間に入り込まないようにする方法です。 胸腔ドレーンを通じて胸腔内に癒着剤を注入して、体をいろいろな方向へ倒して肺の表面に薬を載せてゆきます。炎症を起こさせて癒着させます。ピシバニールやミノマイシンという薬が一般的に使われています。副作用として胸痛や発熱が伴います。まれにショックになることがありますので、厳重な管理が必要です。
癒着療法にはいろいろな問題があります。まず、実際に得られる癒着効果には非常に個人差があります。効果が全くない場合も少なくありません。完全な癒着療法は出来ないことが多いので、気胸が再発してしまうことが多いのです。へんな形で癒着をしてしまうと、その後の治療が非常にやりにくくなりますし、呼吸機能を損なうこともあります。癒着療法は、併存症や呼吸機能の問題などで手術が出来ない場合などの、言わば最後の手段としてとっておくべき方法と考えています。

Q17. 気胸に対し癒着療法が向かないと診断された場合、他にどんな治療法がありますか?

A17.肺の状態が悪すぎて、肺が膨らまないのでしょうか? 肺と胸壁の間に距離があると薬を入れても癒着は困難です。むしろ肺が膨張しない状態で癒着療法をするのは良くありません。肺が虚脱したまま固まってしまう恐れがあるからです。そうなると、肺の働きが戻らなくなり在宅酸素になってしまうことがあります。リンパ脈管筋腫症(LAM)やBirt-Hogg-Dubé (BHD)症候群の患者さんのように嚢胞がたくさんあって気胸を再発しやすい病気の場合には、通常の自然気胸と同じ扱いはせず、ドレナージ治療も専門医に任せた方が良いでしょう。玉川病院気胸研究センターでは胸腔鏡下全肺胸膜カバーリング術という方法をおこなっています。

Q18.全肺胸膜カバーリング術(TPC)、あるいはカバーリング術、とはどんな手術ですか?

A18.Total Pleural Covering術(TPC)が正式な術式名で、肺に嚢胞がたくさんあって気胸を再発しやすい患者さんのために玉川病院気胸研究センターの栗原正利医師が開発した方法です。肺の臓側胸膜、すなわち表面全体を吸収性メッシュで覆い、肺胸膜を補強して気胸を防ぎます。メッシュの材質が胸壁側と癒着しないものを選んで行ないます。胸腔鏡手術で行うことができます。この方法では胸壁と肺は癒着しないので、将来の肺外科手術に問題を起こしません。たとえば、リンパ脈管筋腫症(LAM)の患者さんの中には将来肺移植が必要になる方がいます。気胸に対して胸腔内癒着療法を行なっていると、移植のために肺を摘出する際に非常に手術が困難になります。手術時間もかかり、多量の出血が伴い危険になります。このような将来の肺手術時のリスクを防止することが出来る点で、TPC術は有用な気胸の再発防止策と言えます。

Q19.癒着療法を受けた後でも全肺胸膜カバーリング術は出来ますか?

A19.可能ですが、癒着を剥離できない場合は不完全なカバーリング術になります。出来れば癒着療法をする前に、カバーリング術をすることをお奨めします。

Q20.気胸を頻回に起こしてくると肺機能が低下してリンパ脈管筋腫症(LAM)が進行していることになるのでしょうか?

A20.必ずしもそうとは限りません。LAMの進行度と気胸が起こりやすいこととは一致しません。LAMの初期の患者さんでも頻回に気胸になる人がいます。気胸を初発症状として診断されたLAM患者さんは、肺機能障害やLAMの進行が遅いという報告はあります。

Q21.気胸の患者は、スポーツをするときにどのようなことに気をつければ宜しいですか?

A21.気胸が無ければ基本的にスポーツをすることは可能です。激しい運動も可能です。激しいスポーツをして気胸になることはむしろ希と言って良いでしょう。 スキューバダイビングとスカイダイビングのような気圧の変動を伴うものは止めるべきです。特にスキューバダイビングは浮上できないことになり、非常に危険です。

Q22.気胸になりやすい人は飛行機に乗ってはいけませんか?

A22.気胸になった状態では、搭乗できません。航空会社は搭乗を断ります。気胸になっていなければ飛行機に乗って構いませんが、気胸が起こるリスクはあります。飛行中の機内は0.75~0.8気圧程度に設定されています。そのため、肺の中に嚢胞が多数ある方は嚢胞が膨張して破れて気胸をおこす可能性があります。国内の移動に飛行機を利用する機会の多い米国では、実際に、搭乗中に気胸を起こしたLAM患者さんが報告されています。しかし、搭乗中に気胸を起こすリスクを定量的に表現することは困難です。
低肺機能の患者さんでは、気圧の低下により搭乗中は酸素吸入が必要になる方もいます。在宅酸素療法を行っている患者さんは、地上での酸素流量のおおよそ2倍の酸素流量が必要になると見込まれます。

Q23.海外で気胸になったらどうすれば良いですか?

A23.まず、海外に行くときは旅行保険に入りましょう。医療事情が違うので日本のように簡単に病院にかかれないこともあります。また、アメリカのように医療費が非常に高い国もあります。旅行保険によっては、医師や看護師付で日本へ送り届けるサービスもあります。これが安心です。もし海外で気胸になったら、原則は胸腔ドレナージだけで終えるように頼みましょう。手術まではしないほうが良いと思います。医療レベルの違いや医師の技量も判りませんし、開胸手術になってしまう場合もあります。保険会社に任せるか、直接、私たちに連絡をとり指示を仰ぐのが良いでしょう。いつでもご連絡ください。(問い合わせフォームへどうぞ)

Q24.間質性肺炎による気胸だと言われて、空気が漏れ続けて治りません。どうすればよろしいでしょうか?

A24.間質性肺炎による気胸は大変治療するのが難しいです。感染を伴っていると更に治りにくい状態になっています。私たちにとっても一番頭を悩ませる状態です。(間質性肺炎の項を参照)。どのように考えたら良いか?第一に間質性肺炎は肺が線維化して多かれ少なかれ硬くなっている、あるいはなりつつある状態を伴います。すなわち肺が膨張しにくい状態になっていて、しかもそれが正常な肺に戻らないのです。胸腔ドレーンなどで無理に肺を膨張させることが逆効果になることもあります。どの程度線維化が進んでいるのかを判断することが重要です。第2に間質性肺炎の治療薬である免疫抑制剤とステロイドは組織修復を抑制しているために気漏状態を治す生体反応を抑えてしまっています。したがって、気胸の治療をする前にどこまでそうした薬を止められるか、あるいは減量することが可能か、が重要なのです。第3に患者さんの肺の働きがどのくらい維持されているかを推測することです。空気が漏れている状態では肺機能検査をすることができません。動脈血ガス分析検査とCT画像などで推測します。更に入院前に患者さんがどの程度の日常生活が出来ていたかで肺の働きを推測します。第4に感染をなるべく抑えて肺の働きを良くすると同時に肺の傷が治りやすい環境を整えてやることが重要です。第5に呼吸不全の患者さんは痩せていて基本的体力がありません。静脈栄養などで十分栄養管理を行います。これらの条件がそろった段階で具体的気胸の治療に入ります。治慮法は手術か、手術以外の非侵襲的な治療かを決めます。胸腔鏡手術、TGF(胸腔造影下フィブリングル―閉鎖法)治療、EWS(気管支鏡下気管支閉鎖法)治療などがありますが、単一の治療で可能なことは少なく、これらを組み合わせて治療するのが現状です。

Q25.気胸を繰り返していて、医師からBHD症候群が疑われると言われ、手術ではなく癒着療法を薦められました。どうしたらいいでしょうか?

A25.恐らくCT検査などで肺のう胞が多数あると推察されます。気胸を繰り返していて肺のう胞が多数ある場合は癒着療法を薦められることが多いと思います。(癒着療法の項参照)。癒着療法はおよそ100年前に考えられた治療法で現在まで続いています。当時は画期的な方法として広まりましたが、現在では気胸治療の最終手段としてやむを得ず行われているのが現状です。私どもでは胸腔鏡下下部胸膜カバーリング術(lower pleural covering術)を行っています。BHD症候群は肺のう胞の存在する部位に偏りがあります。すなわち下葉中心で縦隔側(心臓の周辺)、肺底部、葉間部に多発するのが特徴です。これらをすべて切除することは技術的にできません。また、それをすれば肺機能も低下してしまいます。下部胸膜カバーリング術は肺機能を保ちながら気胸を起こさないようにする方法として積極的にこの方法を行っています。

Q26.COPDを10年前から患い、気胸を繰り返していました。今回は空気が漏れ続けています。どうすればよろしいですか?

A26.COPDは慢性閉塞性肺疾患のことで、息がはきにくくなる病気です(COPDの項参照)。そのため、肺は間質性肺炎の場合とは異なり肺は膨張しょうしようとする傾向が強いのが特徴です。肺機能の低下が著しい場合は積極的な手術をすることは推奨されません。まず非侵襲的治療を行うことをお薦めします。
それは二つの方法があります。TGF治療とEWS治療です。Q25でも触れましたが、TGFは胸腔ドレーンからフィブリンのり(生体のり)を使って胸腔造影という検査を行って気漏の部位を見つけ出し、そこに集中的にのりを滴下して止める方法です。EWSはシリコンのカプセルを、気管支鏡を使って空気の漏れている気管支を詰めてしまう方法です。COPDでも手術が出来ないことはありません。肺機能、CT画像、日常の生活状態、栄養状態を判断して手術を行えるかどうかを判断します。いずれも出来ないことになれば胸膜癒着療法を選ぶことになります。

Q27.13歳で気胸になりました。手術をしましたが、すぐに再発しました。また手術を薦められています。どのようにしたらよいですか?

A27.若い人の気胸は通常15-25歳ぐらいに肺のう胞が増加して、気胸になりやすいことが判っています。それ以下の年齢では気胸になりにくいのですが、皆無ではありません。15歳以下の気胸患者さんの場合、手術成績が非常に悪く再発率が約30%になります。したがって出来る限り低年齢では手術をしないほうが良いです。胸腔ドレーンや安静療法を中心に行い、頻回に起こしてやむを得ない場合にのみ手術を考えましょう。

Q28.気胸の手術をしました。管楽器をやっていますが、また気胸になってしまうのか心配です。吹くことが出来ますか?

A28.手術をすれば基本的に楽器を吹くことは出来ます。しかし大きな管楽器(チューバ、トランペット、ホルンなど)は気道内圧がかなり高くなります、再び気胸になる可能性はあります。クラリネットやフリートは術後1カ月以上過ぎれば術前と同じように可能と考えています。

Q29.COPDで在宅酸素をしています。気胸になった場合、 手術は可能でしょうか?

A29.呼吸不全で在宅酸素をしている患者さんでも手術をすることは可能ですが、肺機能やCT検査や日常の生活制限の程度で判断しています。手術以外の治療法も増えて来ましたので選択の幅は広がっています。手術といっても外科医の力量よりも麻酔科医の力量によるところが大きく、外科医と麻酔科医の信頼関係が問われるところです。また術後の管理も非常に重要になります。リスクは伴いますが出来ないことはありません。

Q30.気胸で手術をしました。お酒やたばこは大丈夫ですか?

A30.たばこは慢性的に肺を破壊していきますので禁煙が絶対必要です。数本ならば大丈夫だろうということはありません。手術後多くの人が吸い始めると元の本数に戻ってしまいます。喫煙は個人の嗜好の問題ではなく、「ニコチン依存症」という薬物中毒だかです。アルコール中毒や麻薬中毒と同等の強い依存症なのです。ですから、手術後に「ちょっと一本だけ」のつもりで吸ってしまうとすぐに依存症が戻ってきてやめられなくなってしまうのです。せっかく手術に際してやめたのですから、禁煙を継続してきっちりやめることが重要ですね。お酒を飲むことは基本的に可能ですが、お酒を飲む席では周囲が喫煙をしている人が多く受動喫煙の問題が生じます。また、自ら喫煙してしまうことも多いようです。気をつけましょう。万一、手術後に再喫煙してしまったら、禁煙外来を受診してみましょう。思いのほか、楽にたばこをやめられます。

Q31.肺のう胞は年齢を重ねると、どう変化していきますか?

A31.肺のう胞ができる肺の病気は、私達のホームページをご覧になっておわかりのように、たくさんあります。従って、肺のう胞の経過(大きくなる?、数が増える?、消失する?、など)、は病気によって異なります。
原発性自然気胸の原因とされるブラやブレブは肺尖部に多く生じます。ブラやブレブの成因は、組織の脆弱性、炎症、胸腔内圧などの複数の要因が考えられています。ブラの大きさの経過はさまざまですが、変わらない人が多いです。しかし、中には大きくなる方もいます。一側肺の1/3を超えるくらいの大きさになると、「巨大ブラ」という言い方をします。喘息がブラの発生に係わっている方では、喘息の治療により消失したとする報告もあります。数については、あまり増えることはないと思いますが、上述のブラの成因のうちどの要素が大きな影響を及ぼしているか、により異なると思います。喫煙習慣が原因の一つになっている場合には、喫煙を継続することによりブラが大きくなったり、数が増えることはあり得ると思います。
リンパ脈管筋腫症(LAM)では、嚢胞の数が時間とともに増えていくのが特徴です。生じた肺嚢胞は、少しずつ大きくなる傾向があります。これらの経時的変化は胸部CT検査でわかりますが、半年前や1年前の胸部CT検査との比較では、はっきりとした差が肉眼ではわからないのが普通です。しかし、数年前(例えば3~5年前)の胸部CT検査と比較すると、このような病気の進行がよく理解できると思います。
Birt-Hogg-Dubé症候群(BHDS)の患者さんの嚢胞の数は、時間とともに大きくなる傾向があります。また、数も増えるようです。BHDSの患者さんでは、嚢胞はいつから出来始めるのか?、よくわかっていません。しかし、7歳の小児で気胸を発症した報告があるので、速いヒトでは10歳未満から嚢胞が生じ始めると推測されます。嚢胞の数の増え方や大きさの変化は、LAMの嚢胞と比べてとてもゆっくりであると感じています。一般に、重症のLAM患者さんでは肺全体が嚢胞で占められるようになり、呼吸不全(必要な酸素を血液に送り込めなくなる状態)になりますが、BHDSの患者さんでは、高齢になっても呼吸不全になるほど嚢胞が増える方は経験しません。そのため、BHDSの患者さんでは、気胸が起こった際には、気胸を再発しないような治療を心がけることがとても大切です。

Q32.高校生ですが、気胸を治療するために胸腔鏡手術を受けました。2週間後に海外への修学旅行が迫っていますが、参加してよいでしょうか? どのくらいの期間が経過したら、飛行機に乗って海外旅行にいけますか?

A:手術後、肺も皮膚も完全に傷が治るのには約1ヶ月かかります。退院後、少なくとも3週間くらいは用心されて様子を見た方がよろしいかと思います。従って、術後2週間での海外への飛行機による移動はされない方が無難です。期間については、明確な決まりがないのが実情で、私達は1ヶ月を目安にしています。一方、主治医の判断ですぐに乗ってよいと言う場合もあり、術後3ヶ月は飛行機に搭乗してはいけない、という医師もいます。

Q33.海外へ修学旅行中に息子が気胸になり、現地の病院で最低1週間の安静が必要と診断されました。医師同乗の飛行機で帰ることはできるのでしょうか?また、軽度の気胸の場合、1週間の安静で飛行機は乗れるのでしょうか?

A:旅行保険による医師の帯同は可能であり、保険会社に直接連絡をしてください。保険会社は登録された医師のリストを持っていますので善後策を考えてくれます。保険会社と契約しているagent(仲介業者)が、通訳、主治医とのやりとり、飛行機の手配、日本における受け入れ病院の手配すべてを保険の範囲で代行してくれます。現地の登録医師または登録看護師を探し出し、迅速に対応してくれます。
軽度の気胸でも、安静のままで経過を診た後の1週間で飛行機に乗るのは無理かと思います。一方、胸腔に排気のためのドレーンが挿入されていても、医師が同乗するのであれば可能です。一般的には、1) 胸腔ドレーンによる排気だけで気胸が治癒した後は、最低2 ~ 3週間は空けたほうがい良い、2) 胸腔鏡手術を受けてブラのある肺組織を切除した後は1ヶ月間を空けた方が良い、私達は考えています。どのくらいの期間が良いかの明確な決まりはありません。主治医の判断になります。従って、私達のアドバイスは、あくまでも参考意見として受け止め、現地の医療担当者とよく相談したうえで決めて下さい。すべて主治医の判断と責任において患者さんの輸送・医師の帯同を決めることになります。

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