設立にあたって

気胸・肺のう胞スタディグループ Study group for pneumothorax and cystic lung diseases

気胸とは、肺と胸壁に囲まれた空間(胸腔)に空気が蓄積した状態を表しています。肺のう胞は気胸と密接な関係がありますが、根本的な問題として、なぜ発生し破裂するのかも明らかにはなっていません。自然気胸の原因となる疾患は多様であり、日常診療では慢性閉塞性肺疾患、肺癌、間質性肺炎、感染症などが経験されます。その他に、病因や病態の十分解明されていない稀なのう胞性肺疾患の場合もあります。例えば、ランゲルハンス細胞組織球症、Birt-Hogg-Dubé (BHD)症候群などののう胞性肺疾患、Marfan症候群、Ehlers-Danlos症候群などの結合組織疾患などが挙げられます。リンパ脈管筋腫症(LAM)、月経随伴性気胸などの女性特有の疾患も知られています。さらに、私たちの研究では、これらに該当しないのう胞性肺疾患も存在することが明らかになってきました。

医療者は気胸の治療には関心を持つけれども、病因や病態、肺のう胞の病理診断などにあまり関心を向けてこなかった事実があります。気胸は精神的・肉体的ストレスで起ることも経験上判っています。しかしながら、その治療において、治療法や適応基準が必ずしも病院間で同じではないことも現実です。患者さんの言葉を用いれば、「医師によって説明が異なる。病院によって説明や治療法が異なる。何を信じて良いか判らない」などの指摘を受けています。実は、治療法について明確に答えられる医師は皆無で、基礎疾患毎に異なるかどうかも十分には検討されていないのが現状と言わざるを得ません。学会でもガイドラインを作る試みを始めたばかりです。

一方、患者側からみれば、予想に反して気胸は社会生活を窮地に追いやる程の重大な疾患となっています。すなわち、気胸を反復するたびに入院・休職を余儀なくされ、社会的信用を失い、ひいては職を失う恐れがあります。これは気胸を経験して初めて理解できる心的、肉体的ストレスと言えます。気胸を繰り返す患者の苦悩は医療者や周囲の人々に理解してもらえないことが多く、孤独感、不安感を内部に秘めて悩むことも少なくありません。

私たちは、個々にそうした事例を一つ一つ拾い上げて研究をしてきました。しかし、上記のような気胸・のう胞性肺疾患患者の置かれた現状を改善するためには、のう胞性肺疾患の診断、治療、病因や病態の研究に強い関心をもつ医療者が患者さんと協力して持続的に研究してゆくことが、最善と考え気胸・肺のう胞スタディグループを結成しました。

そこで、以下のような3項目を任務とするグループとして活動してゆく決意をいたしました。

  1. 気胸・のう胞性肺疾患の研究や治療法の開発を推進します。
  2. 診断や治療に苦慮する気胸・のう胞性肺疾患の患者をあらゆる面で支えます。
  3. 気胸・のう胞性肺疾患に関心をもつ医療者の育成を行います。

私たちは気胸・肺のう胞の研究会、学会の設立を目指すのではなく、患者も含めた包括的な研究を進めようとするグループを目指しています。そして、医療関係者、患者、ボランティア、企業を問わずご賛同いただける方々を集め、一致協力して多くの患者さんのQOL向上に繋がるような社会貢献を果たす所存でおります。

気胸・肺のう胞スタディグループ 一同