解説詳細

腎血管筋脂肪腫 ―気づかぬうちに大きくなり、突然破裂して出血することも―

どのような病気?

腎血管筋脂肪腫は、英語でangiomyolipomaと言い、よくAMLと略されます。腎臓に発生する良性腫瘍の一つですが、稀ですが悪性化した報告があります。主に腎臓にできることが多く、単発の場合、多発する場合、片方の腎臓にのみ発生する場合、両方の腎臓に発生する場合など、様々です。AMLは、その名が示すように血管、筋肉、脂肪を主たる構成成分とする腫瘍ですが、各々の組織の割合は個々の腫瘍により異なっています。LAMとは無関係に単発で腎AMLが生じることがありますが、LAMの日本の疫学調査の結果では、LAM患者さんの20-30%位はAMLを合併しています。欧米では日本人より多いようで、40-50%のLAM患者に認めるとされています。そのため、LAMと診断されたら、腎AMLや後腹膜腔や骨盤腔のリンパ脈管筋腫lymphangioleiomyoma(お腹の中のリンパ節のLAM病変)があるかどうかを調べるために、超音波検査、CT、MRI、などの何らかの検査法で腹部や骨盤部の精査を受けることがよいでしょう(図1)。

どのような症状がある?

小さいうちはほとんど自覚症状がありません。ですから、気づかないうちに大きくなり、腹部や骨盤部の圧迫症状(腹部膨満感、腰の痛み、便秘など)、腫瘍の血管が破裂して腫瘍の中や腫瘍の周囲に出血を来すことがあります。血尿を認めることもあります。一般に腫瘍が大きくなっても尿をつくる力は保たれることが多く、血液検査で腎機能の指標となる尿素窒素BUNやクレアチニンは異常を示さないことが多いです。

どのような治療法がある?

大きさとAML内の血管の多さを考慮して、治療法を考えます。腫瘍は一般に大きくなるほど周辺への圧迫症状を起こしますし、血管も多くなり、出血の原因となりやすい動脈瘤も腫瘍内や腫瘍の辺縁に生じてきます(図1)。以下におおよその目安を示します。
1)腫瘍の最大径が4 cm未満であり、自覚症状もなければ、年1回の検査で経過観察を続けます。しかし、腰やお腹の痛み、出血(血尿など)、吐き気、などの原因になっていれば、治療を考える必要があるかもしれません。
2)腫瘍の最大径が4 cm以上の場合には、6ヶ月に1度くらいの検査で大きさの変化、血管の太さや動脈瘤の有無を調べた方がいいでしょう。もし4 cm以上の大きさで、かつ上記のような何らかの自覚症状があれば、治療を考える必要があります。また、動脈瘤の径が5 mm以上あると出血のリスクもあり、治療が必要です。

治療には、腎動脈塞栓術と外科的切除術があります。一般的には腫瘍が4 cm以上、または動脈瘤の径が5 mm以上で治療の対象となります。腎動脈塞栓術はカテーテルを用いた血管内治療です。腫瘍内の血管をつめて血流を遮断し、AMLの破裂や出血を予防します。あるいは既に破裂や出血している場合に緊急に止血するために行われます。塞栓後には腫瘍は縮小し、小さな腫瘍では消失することもあります。外科的切除術には、腫瘍だけを切除する場合(部分腎摘出術)と腎臓全体を摘出する場合(腎全摘術)があります。どちらの処置になるかは外科医の判断ですが、できる限り取り除く部分は小さくできることが望まれますが、状況によっては全摘術しかできない事もあり得ます。

図1 腎血管筋脂肪腫のMRI像
説明: 左は冠状断像。右腎臓(矢頭で囲んだ部分)の上極に巨大なAML(両端矢印の直線で示してある)を認める。右はMRIで血管を描出した画像。矢印で示した部分はAML内の動脈瘤であり、出血のリスクがある。